アダルトチルドレンが親と向き合う時②

前回、アダルトチルドレンである親との接し方に正解は無い、と書きました。
あなた自身や親のメンタルの状態・メンタルの成長具合、親子の関係性、あなたのパートナーの協力等によって変わってくるからです。

今回は、例として私の経験を書きたいと思います。
何かしら、参考になれば幸いです。

 

母と距離を置く

私は10年前に心理療法を始め、その時、初めてアダルトチルドレンの概念を学びました。
自分の生まれ育った環境に問題があったことで心に傷ができ、その心の傷が現在の生きづらさを引き起こしていることを知ります。

当時受けていたカウンセリングは、子供時代に抑圧していた感情、特に怒りの感情を解放することで心を軽くしていくアプローチで行われました。
カウンセリングを続け、自分でも自己分析を行うことで、抑圧していた感情、特に母への強い怒りがどんどん出てきて、当時はその怒りを抑えることができませんでした。

この気持ちのまま母と接することは無理だ、と思うようになります。
そこで、その怒りが治まるまでは、母と断絶してみることにしました。
「私の気持ちが治まるまで、一切連絡しないでくれ」と手紙を送ります。

しかし、母を拒否していた間、罪悪感を非常に強く抱いてしまい、怒りよりも罪悪感への対応のほうが大変でした。
アダルトチルドレンの親との付き合い方は、色々と試行錯誤していく必要がありますから、この方法を取ったことに後悔はしていません。
でも、今振り返ってみると、私にはあまりメリットが無く、合っていない方法だったと思います。

母を受け入れる

母との交流を再開した後は、関係性を良くしようと努めます。
まず私は、母の言うことの大半を受け入れるようにしました。

母の中には厳格なルールがあり、昔から子供を自分のルールに従わせようと躍起になっていました。
私たち子供が、母のルールに従わなければ、激しく怒るのです。
それは私たちが大人になっても変わりません。

この頃の母は、私が実家に帰省すると、私のすることなすこと全てに口出しして、自分の思うように動かそうと、支配しようとしていました。
以前はそれが嫌で、帰省する度に口論となってお互いを傷つけ合っていたのですが、どうしても受け入れられないこと以外は、母親の言う事に従うようにしたのです。

自分の欲求は手放して、母親の欲求を受け入れることにしました。
心理療法のおかげで、精神的には母より私のほうが大人になった実感があったので、私よりも精神的に子供である母の思い通りにさせてあげよう、という気持ちでした。

すると驚くことに、これを数年続けたところ、母は劇的に変わりました。
以前は機嫌に関係なく、常に私の言動に口出しをし、私を支配しようとしていました。
それが、機嫌が良い時には、私を束縛せず、私の自由にさせてくれるようになったのです。

例えば、非常に小さいことですが、以前の母は、私の入浴後、何としてもバスタオルを使わせようと躍起になっていました。
私は普段、自分の家ではバスタオルを使いません。
私にとっては、小さいフェイスタオルのほうが、小回りが利いて使いやすいからです。

でも、母の中には「入浴後はバスタオルを使わなければいけない」というルールがあります。
母は保守的で融通が利かないタイプ。
例え合理的な理由があったとしても、従来のルールを崩すことに強い抵抗感を持つのです。

フェイスタオルを使う事を許せない母は、私が入浴後にフェイスタオルを使おうとすると、気色ばんでイライラし、バスタオルを投げつけてきました。
私としても、「なんでタオルくらい自由に使わせてくれないのか。理不尽だ」と怒りが湧いて、よくケンカになったものです。

そこで、「タオルくらい、母が望む通りの物を使ってあげよう」と考えを変え、母の言う通りにバスタオルを使うようにしました。
数年バスタオルを使い続けたところ、母はタオルのことで文句を言わなくなりました。

今では、帰省してもバスタオルを使うことは無くなり、自由にフェイスタオルを使っています。
母は、私がフェイスタオルを使おうがバスタオルを使おうが、気にならなくなったようです。

タオルの話はほんの一例ですが、多くのことについて自分の欲求は手放し、母の欲求に従って母を受け入れるように努めました。
不思議なことですが、自分の欲求を手放して母を受け入れたら、母も自分の欲求を手放して私を受け入れるようになったのです。
心理学ではよく、「自分が変われば周りが変わる」と言いますが、それを強く実感しました。

但し、母が変わったのは、あくまで「機嫌が良い時」に限られます。
機嫌が悪くなると、以前のように理屈なんて全く通じず、私を支配しようとし、理不尽に怒り狂ってきます。
そこで、母を受け入れつつ、更に対応を工夫する必要がありました。

次回は、母が変わった理由と、次に私が試した対応をご紹介したいと思います。