ウツや不眠に、恐れずに向き合うということ

ウツ・不眠は「悪いもの」という誤った価値観
最近、相談者の方々からよく耳にする言葉があります。
それは、
・ウツになるのが怖い
・このままではウツになるのではないか
といった不安の声です。
悩みが深くなり、思考がぐるぐると巡って気持ちが沈んでいくと、
「このままではウツになるかもしれない」
と感じてしまうのですね。
このような状態の背景には、
| ・ウツは良くないもの
・落ち込むことは悪いこと |
という前提があるようです。
悩むこと自体が悪い
という価値判断のもとで、「こうなってほしくない」と強く願う。
そのような思考が、かえって苦しみを深めてしまうのです。
私は、そうしたご相談を受けた際、
「ウツになったら休めばいいんですよ」
とお伝えしています。
ウツは「なってはいけないもの」ではなく、
条件が揃えば、誰でもなる可能性がある自然な状態です。
診断がつかなくても、抑ウツ的な気分になることはありますし、
それ自体が悪いわけではありません。
ウツは一つの「状態」に過ぎず、
ずっと続くものではありません。
瞬間瞬間で、気分は変化しますし、
ウツの最中にも、良い気持ちになる瞬間はあるのです。
ですから、
・ウツになったら休む
・状態が上がってきたら、また動き出す
それで良いのです。
「ウツになりたくない!」
「ならないようにしなきゃ!」
と、考えすぎるほど、欲を抱けば抱くほど、苦しくなり、かえってウツになる確率は高まります。
そうではなく、
「なったらその時に対処すればいい」
と考えて欲を手ばなすと、
気持ちは楽になり、結果として、ウツになりにくくなるのです。
これは、例えば不眠症などにも通じます。
眠れないことを「悪いこと」と捉え、
「寝なければいけない!」と思えば思うほど、眠れなくなってしまいます。
そんな時には「寝なくても良いですよ」とお伝えします。
どうせ身体が限界を迎えたら、勝手に眠りますから、と。
身体は、限界が来れば必ず眠るようになっています。
だから、眠れない時は無理に寝ようとせず、
好きなことをしてリラックスする方が、結果的に眠れるようになるのです。
ウツや不眠は、自分を変えるチャンス!
ウツや不眠といった状態は、実は「自分を変えるチャンス」でもあります。
ウツになる背景には、たいてい「欲」があります。
欲が思い通りにならないとき、
人は強く悩み、現実を変えようとして苦しみます。
しかし、
その欲を手放すこと
で、心は軽くなり、状態も改善していきます。
ウツは、自分の欲に気づくための「良いきっかけ」なのです。
私自身も、かつて不眠に悩んだ時期がありました。
会社勤めをしていた頃、体調が悪く、通勤できるかどうか不安になったからです。
休職明けの時で、人事から、「1日でも欠勤したら、即日解雇する」と言われていたので、
そのプレッシャーから、夜眠れなくなってしまったのです。
「もし、体調不良で休んでしまったら、クビだ。
クビになりたくない!」
と、強い欲を抱いてしまったのですね。
ですが、ある時「クビになったら、その時考えればいい」と思えたことで、
気持ちが楽になり、眠れるようになりました。
「生活保護という制度もある。最悪の事態になっても、何とかなる」
そう考えられたことで、リラックスできたのです。
要するに、欲を手ばなした のですね。
不眠という状態は、
「クビになりたくない!」と、しがみついていた強い欲から離れるきっかけになりました。
心を成長させる良い機会だったと、今では思っています。
ウツも不眠も、恐れることはない
ウツも同じです。
なったらなったで、心を成長させる良いきっかけになります。
だから、恐れる必要はありません。
「ウツになったら休めばいい。」
それだけのことです。
私自身も、以前はウツっぽい期間が長く続いたことがありました。
普段は「これをやりたい」「あれをやりたい」と自然に湧いてくるタイプなのに、
その時期は何も楽しくなく、何もしたいと思えませんでした。
「この状態は良くない!」と思い、
焦って「何か興味を持たなきゃ」と、
無理やり、美術館やコンサート、映画館に行っていました。
以前だったら楽しめた絵も音楽も絵も、その期間は全然楽しく感じません。
でも、無理やり何とか楽しもうと、
体調不良の身体に、ウツ傾向の心にムチ打って、必死に足を運びました。
これは、苦しかった。。。
当然ながら、かえって、しんどくなりました。
今思えば、完全に逆効果でした。
何もしたくないなら、何もしたくない気持ちを、ただ味わえば良かったのです。
「楽しくないなら、何もしたくなければ、それで良い。
ウツ傾向なら、それを味わえば良い」
と、「ウツを何とかしないと!」という欲を手ばなした時、楽になりました。
| どんな状態であっても、まずはその状態を受け入れて味わうこと。 |
そうすれば、気持ちは落ち着き、また適切な対処法が自然と見えてきます。
何も恐れることはありません。
考えすぎてしまう方、悩みがちな方、頭が疲れてしまっている方──
そんな方々に、少しでも参考になればと思います
もし、ウツになりそうだと感じたら、
「なったらなったで、休めばいい。」
現実に逆らわず、たた、その状態を受け入れて下さいね。