お悩み例⑤子供がなつかない

クライアントさんのお悩み例、第五段です。

 

子供がなつかない

Aさんの娘は、生まれた時からAさんに、なつきませんでした。
オッパイをあげようとしても、手を突っ張って拒否しようとします。
でも、看護師さんなど他の人が抱くと、嬉しそうです。

話せるようになっても、Aさんには淡泊に接し、甘えることもありません。
でも、夫や舅姑には、とても甘えます。
なつかないのは、Aさんと、Aさんの母親の2人だけです。

先日、Aさんは腰の手術の為に1週間入院しました。
その間、姑が泊まり込んで娘の面倒をみてくれました。
入院前、娘は寂しがることも無く、「ママ、バイバイ」と淡々としていました。

でも1週間後は、「おばあちゃんと離れたくない。おばちゃん、帰らないで!」と姑にしがみつき、泣き叫ぶのです。
Aさんは、複雑な心境です。
これからの子育てを不安に感じ、カウンセリングを受け始めました。

子供は親の心を敏感に察する

子供が母親を拒絶することは、決して珍しいことではありません。
子供は親の心を敏感に察知する能力を持っています。

親の愛情が薄ければ、0歳児でもそれを察して、親と距離を置こうとします。
生まれる前の胎児でさえも、母親の心を察していると言われているのです。

Aさんと話をしていても、母性があまり感じられません。
Aさん自身も、「実は子供のことが、それほど可愛いとは思えなくて。。。」と言っていました。

母親は、妊娠したり出産をすると、自動的に母性が出るものです。
でも、心に問題を抱えて感情がマヒしていると、母性が出にくくなります。
Aさんの娘も、Aさんの愛情の薄さを敏感に感じ取っているのでしょう。

妊娠から出産までのAさん

Aさんは、いずれは子供が欲しいと思っていました。
でも、子供がいる生活は煩わしく思えて、なかなか子作りに踏み出せませんでした。
とは言っても、出産には年齢的な制限があります。
40歳を間近に控え、Aさんはとうとう決断して妊娠します。

妊娠が分かっても、あまり嬉しさはありませんでした。
「出産したら、自由な時間が無くなってしまう。」
こんな風に考えて、出産を憂鬱に感じていました。
なんと、出産前日まで、「生まれてこなければ良いなー」と思っていたそうです。

いざ出産すると、妊娠時よりは、子供に対して愛情が湧きました。
生まれた子を見ると、「可愛いなー、生んで良かったなあ」と思います。

でも、他のお母さんと比べると、明らかに愛情の深さが違うと感じます。
「子供は可愛いけれど、自分の時間を邪魔されたくないな。やりたいことを犠牲にしたくないな」
と思ってしまうのだそうです。

そんな気持ちが子供に伝わって、子供がなつかないのだろうな、とAさん自身も分かってはいます。

Aさんの子供時代

Aさんの娘は、Aさんだけでなく、祖母であるAさんの母親にもなつきません。
実は、Aさんの母親もまた、愛情が薄い親でした。

Aさんの母親は、自分のやりたいことが中心。
歌舞伎が好きな母親は、しょっちゅう、歌舞伎座に足を運んでいました。
歌舞伎の観覧費用を捻出する為に平日は仕事をし、休日は歌舞伎を観に行く。

子育てはほとんどしなかったそうです。
参観日など、学校の行事に参加することも全くない。

「お前がいなければ、もっと遊びに行けるのに」

こんな言葉を、母親はAさんに言っていたそうです。
Aさんは母親の愛を知らないで育ったのです。
そんな母親を見ていたAさんは、

「子供は、自分の邪魔をする存在」

と思うようになります。
それで、子供ができると、「厄介者ができた」と負担に感じて、なかなか母性が育たないのですね。

喜怒哀楽が無かったAさん

カウンセリングを始めた当初は、話をしていても、Aさんからあまり喜怒哀楽を感じませんでした。
子供がなつかないことも、口では「寂しいし不安だ」と言っていますが、あまり実感を伴っているようには思えません。
母親のことも、最初は淡々と話していました。

でも、子供時代の話を深く聞くうちに、だんだんと感情が伴うようになります。

私は寂しかった。
もっと構って欲しかった。
愛してほしかった!

感情が溢れて、カウンセリングで涙が出ることも増えました。
子供時代の感情をありありと思いだせるようになると、表情も明るくなり、生き生きとした雰囲気が出てきました。
同時に、娘への愛情も大きくなっていきます。
Aさんは、

今までは感情に鈍感だったのですね。
今は感情を味わえるようになりました。
何だか、毎日に張り合いを感じます。
子供との毎日が、楽しくなりました!

と目を輝かせています。

まとめ

子供時代に感情にフタをしてしまって、大人になっても感情がマヒすることがあります。
感情がマヒすると、イキイキとした感覚が持てず、毎日がつまらなく感じ、抑うつ状態になる人もいます。
あなたは、イキイキとした感覚を持っていますか?